Case Study
創業120年・丸屋呉服店との共創事例。着物デッドストックと伝統素材を次の時代へつなぐ
Partner
株式会社丸屋
千葉県横芝光町 · 創業120年以上 · 着物・帯・和装小物の老舗呉服店
合同会社遙の設立と同時期に始まった、株式会社丸屋との共創プロジェクト。120年以上の歴史を持つ老舗呉服店が抱える着物デッドストックを、廃棄ではなく「次の市場へ接続する資産」として捉え直す。素材の整理・アーカイブ化から始まり、素材バンク構築・共創商品開発へと展開するこの取り組みは、遙が目指す老舗共創モデルの最初の実証だ。
丸屋呉服店について
千葉県横芝光町に本拠を置く株式会社丸屋は、創業から120年以上の歴史を持つ老舗呉服店だ。着物・帯・和装小物の販売を中心に、長年にわたって地域の和装文化を支えてきた。その歴史の中で蓄積されてきた素材の知識と在庫は、他では得られない固有の価値を持っている。
合同会社遙は、2026年の設立直後から丸屋との共創関係を構築した。丸屋は遙にとって「第一号の共創パートナー」であり、遙が目指す老舗共創モデルの出発点となる存在だ。
背景:着物デッドストックという課題
老舗呉服業界では、高度経済成長期からバブル期にかけて製造・仕入れられた着物・帯・反物が、和装市場の縮小とともに動かなくなるケースが多い。丸屋においても、高品質でありながら通常の呉服販売ルートでは流通が難しい素材が、倉庫の中で眠り続けていた。
こうしたデッドストックは「在庫問題」として語られることが多いが、本質はそれだけではない。眠る着物・帯には、職人の技術・染料・産地の記憶が刻まれている。廃棄されれば、その文化的・技術的な価値は永久に失われる。価値ある素材を、次の時代の市場へ届ける仕組みが必要だった。
取り組み:素材整理・素材バンク・共創商品開発
遙が丸屋との共創で推進しているのは、三つの取り組みだ。第一は「素材の整理とアーカイブ化」。倉庫に眠る素材を精査し、種別・産地・染法・保存状態を記録していく。単なる棚卸しではなく、素材の来歴と価値を可視化するドキュメント化のプロセスだ。
第二は「素材バンク構想」の構築。来歴情報の整備された伝統素材を、サステナブル素材を求めるブランドやデザイナーへ安定供給するインフラだ。素材と買い手を直接つなぐこの仕組みが、老舗の在庫を継続的に流動化させる鍵となる。
第三は「共創商品の企画開発」。丸屋の素材を活用したモダンなプロダクトを共同で企画・開発する。伝統的な絹・麻素材に現代のデザインと用途を掛け合わせることで、老舗の素材資産に新たな市場価値を付与していく。
この共創が生み出す価値
老舗の歴史と素材を守りながら、現代の市場へ接続する。それが遙の共創の核心だ。
丸屋との取り組みが目指すのは、単なる在庫の換金ではない。着物デッドストックは「廃棄すべき負の資産」として扱われることが多い。しかし遙は、それを逆転させることを目指している。素材の来歴と文化的価値を整理し、現代の市場文脈の中で語り直すことで、「眠る資産」は「希少な素材価値」に転換できる。
老舗が持つ歴史・信頼・素材を守りながら、現代のブランドや消費者が求める形に接続する。そのプロセスを設計・実行することが、遙が共創において担う役割だ。素材を右から左に動かすだけでなく、価値の文脈ごと再編集する——これが、遙の考える老舗共創の本質である。
現在の進捗
2026年4月現在、丸屋との共創は初期フェーズを着実に進んでいる。素材の棚卸・アーカイブ化と並行して、商品企画の基礎固めに取り組んでいる。素材バンクの供給先となるブランドやデザイナーとの対話も開始しており、供給体制の構築に向けた準備が進みつつある。
どのプロセスも、拙速な「成果」より「正確な価値整理」を優先している。丸屋が120年かけて積み重ねてきた資産を、正しく理解した上で動かすことが、長期的な共創の基盤になると考えているからだ。
今後の展望
丸屋との共創モデルは、遙が今後展開する老舗共創インフラの「先行事例」として位置づけている。ここで確立するプロセス・ツール・ノウハウを体系化することで、同様の課題を抱える他の老舗や伝統産業への横展開が可能になる。
着物・帯に限らず、染織・陶磁・漆器・和紙など、日本各地に眠る伝統素材は多岐にわたる。丸屋との共創が示す「素材の再編集と価値接続」のモデルを、より広い伝統産業の再生に応用していくことが遙の長期的な目標だ。
Closing
おわりに
丸屋呉服店との共創は、合同会社遙の原点のひとつだ。眠る着物デッドストックに価値を見出し、それを次の時代へ接続しようとするこの取り組みは、遙が掲げる「文化資産の再流通」という理念を、最も具体的な形で体現している。
類似の課題を抱える老舗・伝統産業の方、また伝統素材を活用した商品開発にご関心のある事業者の方は、ぜひ遙にご相談いただきたい。
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